証券会社システム
証券会社システムSecurities Mamagement System
インターネット取引の拡大など進化を続ける証券会社業務を支えるシステム

証券会社システム

証券会社システムの概要

証券会社システムは、昭和30年代に事務処理の機械化を目的としてバッチ処理を中心としたコンピュータが導入されたのち、昭和40年代にはオンライン処理化が進められました。その後、昭和50年代以降は国際系システムや対外系システム、情報系システムの構築が順次進められてきました。

また、平成8年以降は、インターネットを用いた個人向けの証券取引サービスが活発化したことから、各社とも市況情報の提供やグラフィカルな取引支援ツールの提供など、インターネットチャネルの拡充に力を入れてきています。

さらに、平成13年以降順次、取引所取引のDVP決済や一般振替DVP決済が開始されたほか、有価証券の保管コストや紛失リスク低減のため、有価証券のペーパーレスが順次進められました。各社ともこれらのシステム対応を行ってきており、照合・決済業務等における自動化(STP化)が進んできています。

また、決済リスクの低減や資金流動性の確保を目的として 証券決済期間の短縮が図られてきています。具体的には、2019年に株式取引のT+3からT+2への移行、2020年に国債のリテール取引や一般債取引のT+2への移行が完了しています。

その他、2024年から開始した新NISA制度(非課税枠の拡大など)では多くのシステム対応が進められ、結果的に多くの顧客が新規に投資信託や証券取引を開始するなど、顧客層の拡大に繋がりました。具体的には、「成長投資枠とつみたて投資枠」の年間非課税枠の管理、既存NISAデータ移行とロールオーバー対応、対象投資信託の管理など、短期間で多くのシステム対応が実施されています。

証券会社システムは、証券業務の中核を担いながら、効率性と安全性を両立するために日々進化しています。特にデジタル化が進む中で、クラウドや生成AIの導入が加速しつつありますが、同時に規制制度(AML・継続的顧客管理対応、最良執行方針、ISO20022対応、取引時間延長など)やセキュリティリスク(不正アクセスやサイバーセキュリティガイドライン対応)に対応するための継続的な投資が必要となっています。

証券会社システムの概要図

以下に典型的な証券会社システムの概要図を示します。各証券会社により、システム構成は大きく異なります。

証券会社システム

証券会社システムの特徴

証券会社システムの特徴を以下に示します。

高い可用性・信頼性

システムトラブル等により、顧客の注文処理を適切なタイミングで市場で取引できなかった場合、機会損失も含めて顧客に損失を与えてしまう可能性があります。また、誤った注文(注文数や指値の誤り)を出してしまった場合、全ての注文を取り消すことは困難です。このため、証券会社システムでは高い可用性・信頼性が求められます。

高速取引への対応

近年、アルゴリズム取引やHFT取引が広く普及しており、世界の取引所もミリ秒単位の取引スピードを競っています。このため、証券会社システムも投資家側の高速処理ニーズに応えるために、取引システムの低レイテンシ対応やSTP化対応を進めています。

広範なネットワーク

証券取引を行うためには、商品単位や地域単位での複数の取引所との接続や、資金・証券の各決済センター(日銀ネット、ほふり、日本証券クリアリング機構等)と接続を行う必要があります。

証券会社システムの機能概要

基幹系システム

注文系システム

注文系システムは、顧客から営業店やコールセンター、インターネット等の各チャネル経由で受け付けた売買注文情報をシステムに登録した上で、取引所に注文データを送信し出来結果を処理するシステムです。

注文データを取引所に送信する前に、与信額(預り残高)チェックや異常注文チェック(入力ミスチェック等)、コンプライアンスシステムと連動した顧客属性チェック(インサイダー有無等)などが実施されます。

取引所において売買処理が行われた後、取引所から出来データ(売買成立可否情報)が返却されてくるため、当システムにおいて、注文データとの突合処理を行い、金銭残高や証券残高の更新を行います。

約定系システム

約定系システムでは、1日の取引時間終了後に取引所から送信されてくる売買株数と売買金額データと、注文系システムで処理した結果データを照合(清算照合)するシステムです。

清算照合が完了した後、各顧客の金銭残高や証券残高を更新し、取引報告書や取引残高報告書等の作成を行います。

決済系システム

決済系システムは、売買注文が設立した日から3営業日目(T+2)などに、各証券会社間の売買代金の決済や株券の受渡を管理するシステムです。

各取引所で成立した売買データに基づき、日本証券クリアリング機構において、受渡資金・受渡証券のネッティング処理が実施された後、証券保管振替機構と資金決済銀行(日本銀行含む)へDVP決済(証券決済と資金決済の同時化)指示が出されて、決済処理が完了します。

決済系システムでは、これらの清算処理・決済処理について、証券会社側の保有データの管理・更新を行っています。

顧客・口座管理システム

顧客・口座管理システムは、各証券会社の顧客情報や証券口座情報を管理するシステムです。注文時のチェックや手数料計算、預り金管理、清算・決済処理などに使用されます。

コンプライアンスシステム

コンプライアンスシステムは、証券会社の売買業務等における不正取引(インサイダー取引、一律集中的取引、過当回転売買取引等)の監視・検知を支援するシステムです。

オンライントレードシステム

オンライントレードシステムは、インターネット経由で株式等の注文受付や価格照会、口座情報照会等のサービスを提供するシステムです。

ネット専業証券会社の登場による競争激化もあり、オンライントレードは着実に個人顧客を開拓してきました。現在では個人顧客取引の大半はオンライントレードによるものと言われています。

提供される機能についても、市況情報提供のほか、ポートフォリオ管理ツール、アルゴリズム取引支援ツールなど、様々なツール・機能が提供されるようになってきています。

外部接続システム

外部接続システムは、証券取引所などの外部センタと基幹系システムやオンライントレードシステムとの接続を制御するシステムです。

具体的には、証券取引所以外に、証券・資金の清算業務を行う日本証券クリアリング機構や、証券の決済を行う証券保管振替機構、資金決済を行う日銀ネットなどとの接続を制御しています。

情報系システム

情報系システムは、経済情報や投資情報、銘柄情報等を提供する情報提供システムや、個人・法人の顧客情報を管理してマーケティング等に活用するCRMシステムなどから構成されています。

顧客の開拓やクロスセル、顧客取引回数の引き上げのための重要なシステムとして、各社とも機能強化に力を入れています。

チャネルシステム

チャネルシステムは、営業店やコールセンターなどのチャネル経由で、注文受付や各種照会等を行うためのシステム群です。各営業店において個人顧客からの株式注文等の処理を行うための営業店システムや、コールセンターにおいて個人顧客からの電話注文等を処理するためのコールセンターシステムなどから構成されています。

また、機関投資家が保有する証券管理システムと接続するためのFIXシステムがあります。このFIXシステムでは、FIXプロトコルという証券電子取引の標準プロトコルを用いて、注文処理や約定処理、決済処理等を自動化(STP化)しています。

その他システム

その他のシステムとして、海外現地法人や支店との間で注文処理や約定処理を行うための国際系システム、証券会社の自己勘定で市場取引等を実施するためのディーリングシステム、市場リスクを計量・管理するためのリスク管理システムなどがあります。

製品・サービス一覧

 証券会社システムの製品・サービス一覧は、以下のページを参照ください。