銀行システム
銀行システムBanking Systems
FinTech・DX対応、クラウド対応など進化を続ける銀行システム

銀行システム

銀行システムの概要

銀行システムの歴史

銀行システムの歴史は古く、昭和30年代に都市銀行において手形小切手などのバッチ処理用に初めてコンピュータが導入されたのち、昭和40年頃には預金業務をオンライン化した第1次オンラインシステムが構築されました。

その後、昭和50年頃に各科目間の連携機能や外部ネットワーク連携機能が追加された第2次オンラインシステムが構築されました。特に昭和48年には第一次全国銀行データ通信システム(全銀システム)が稼働を開始しており、第2次オンラインシステムでは、銀行間のオンライン振込が可能となり、全国規模でのリアルタイム処理が実現しました。

さらに、昭和60年頃には情報系システムやATMネットワークなどが追加・強化された第3次オンラインシステムが構築されました。

平成になって構築されたポスト3次オンラインシステムでは、バブル崩壊や金融ビッグバンという荒波を受け、各銀行とも新規機能の強化というよりは、最新テクノロジーを活用したシステム構成の見直しやダウンサイジングに力を入れてきました。

具体的には、オープン系システムを活用した周辺系システムの構築や、ハブアンドスポーク型アーキテクチャや安価なネットワークを採用したシステム構築などの取組みが行われてました。
また、インターネットの普及に伴い、インターネットバンキングが登場し、個人顧客向けサービスが多様化しました。

一方、金融ビッグバンや不良債権問題等により都市銀行間の合併が相次いだことから、各行とも多大なリソースを費やして、システム間のリレー接続や統廃合を進めることになりました。また、地方銀行においては、都市銀行ほどは経営統合が発生しなかったものの、システム経費削減のために、システムの共同化が進められてきました。

銀行システムの現状

現在、日本の銀行ITシステムはさらなる進化を遂げています。多くの銀行がレガシーシステムから脱却を目指し、オープン技術を用いた基幹システムのマイグレーションや、オープンAPIやクラウド技術を活用したシステム強化を進めています。

勘定系システムは依然として重要な役割を担っていますが、これに加えてデジタルチャネルやデータ活用の重要性が増しています。例えば、AIを活用した不正取引の検知システムや、トランザクションデータ分析を通じた新たな与信の提供などが注目されています。

また、FinTech企業との連携が進む中、銀行はオープンバンキングの潮流に対応するため、オープンAPIの開放を積極的に進めています。この取り組みにより、第三者サービス提供者との連携が可能となり、エコシステム全体の拡大が期待されています。

例えば、エンベデッドファイナンスを用いたサービス企業へのBaaS機能提供も広がりつつあります。

さらに、近年ではサイバーセキュリティの重要性が急速に高まっています。インターネットバンキング不正送金やランサムウェアへの対策として、本人認証の強化(パスキーの導入など)やセキュリティ運用センター(SOC)の強化などの多層防御が進められています。

銀行システムの構成

以下に、一般的な銀行システムの構成例を示します。各銀行により、システム構成は大きく異なります。

銀行システム

また、参考にパブリッククラウド上にコンテナ技術やマイクロサービスアーキテクチャを活用した銀行システムの構成例を示します。

銀行システム

銀行システムの特徴

銀行システムの特徴を以下に示します。

非常に高い可用性・信頼性

銀行システムは顧客の決済を取り扱うことから、仮にシステムが停止した場合には、広範な影響を及ぼしかねません。特に勘定系システムや決済処理を担う対外接続系システムについては、非常に高い可用性が求められます。さらに、大規模災害などでデータセンターが停止した場合に備えて、各行ともバックアップセンター(災害対策センター)を構築しています。

広範なネットワーク

銀行システムは、他行宛送金やクレジットカード処理等を実現するために、様々な外部センターと接続しています。このため、自行システムの障害が他行に影響を及ぼす場合のほか、外部センターのシステム障害が自行システムに影響を及ぼす場合もあります。

システム共同化

地方銀行や協同組織金融機関においては、勘定系システムやインターネットバンキングシステムを中心にシステムの共同化が行われています。システムの共同化は、比較的安価に最新機能を取り入れることができる一方で、自行の独自性が確保しづらいというデメリットも指摘されています。

また、近年では「共同化の共同化」と呼ばれる動きも加速しつつあります。これは共同センター同士でプラットフォームやネットワーク、システム・アーキテクチャを共同化することで、さらなるコスト削減やレジリエンスを高めることを狙いとしています。

強固なセキュリティ

顧客の個人情報や口座情報など、機微情報を含む多くの情報を保有していることから、情報の管理のために、強固なセキュリティシステムや管理態勢が構築されています。昨今はインターネットバンキングを狙った不正送金被害も多く発生しており、継続的なセキュリティ対策が行われています。

銀行システムのトレンド

日本の銀行ITシステムは、以下のような方向性で進化すると予想されます。

クラウドファースト戦略の加速

多くの銀行が、システムの柔軟性とコスト効率を高めるためにクラウドへの移行を進めています。特に、パブリッククラウドだけでなく、金融機関事業者のみが利用できるコミュニティクラウドや複数のクラウドを組み合わせるハイブリッドクラウドの活用が進んでいます。

例えば、一部の銀行では、コンテナ技術やマイクロサービス・アーキテクチャをフル活用して勘定系システムをパブリッククラウド上に構築する取り組みも進んでいます。

一方で、経済安全保障推進法(経済安保法)による基幹インフラの届出・審査や個人情報保護法の越境移転規制、サイバーセキュリティ攻撃リスクを考慮した場合、引き続きオンプレミスシステムやメインフレームには根強い需要が継続するものと考えられます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の深化

デジタル技術を活用した業務プロセスの刷新や顧客体験の向上が求められています。具体的には、生成AIの導入によるデータ活用の高度化やコンタクトセンターなどの各種顧客対応業務の自動化などが進められています。また、オープンAPIを通じた外部サービスとの統合や、エンベデッドファイナンス・BaaS(Banking as a Service)を活用してサービス企業と連携した新しい金融サービスの提供が期待されています。

サステナビリティと規制対応

環境・社会・ガバナンス(ESG)への配慮が重要視される中、ITガバナンスの強化やグリーンIT・エネルギー効率の高いシステム構築が求められています。また、金融庁による規制対応(バーゼルIII対応など)や、国際的なAML/CFT(マネーロンダリングおよびテロ資金供与対策)対応、サイバーセキュリティ管理態勢の強化も重要な課題となっています。

個別システムの概要

銀行システムを構成する個別システムの概要については、各解説ページを参照ください。

勘定系システム

勘定系システム

勘定系システムは、預金・融資・為替など、銀行の中核業務を処理する最も重要なシステムです。このシステムが停止すると、銀行業務全体が停止するため、歴史的に非常に高い信頼性と可用性が求められてきました。

対外接続系システム

対外接続系システム

対外接続系システムは、全銀システムなどの外部センターと銀行の内部システムを接続する重要なシステム群です。このシステムでは、外部センターとの通信制御処理(開局処理、閉局処理、プロトコル変換など)や、電文変換処理を行っています。

国際系システム

国際系システム

国際系システムは、海外支店や現地法人で使用される国際勘定系システム、外国為替取引を担当する外為システム、企業のグローバル資金を統合管理するキャッシュマネジメントシステムなどで構成されています。

情報系システム

情報系システム

情報系システムは、勘定系システムなどから収集した元帳情報や取引情報を蓄積し、これを基に経営管理、マーケティング、データ分析など多様な用途に対応するためのシステムです。

経営管理系システム

経営管理系システム

経営管理系システムは、金融機関の収益や資本管理を担当する経営管理システム、会計や決算を支援する会計・決算支援システム、さらに内部監査を支援する監査支援システムなどで構成されています。

融資支援システム

融資支援システム

融資支援システムは、融資業務の効率化とリスク管理を目的としたシステム群です。顧客の融資申し込みから審査プロセスの自動化、格付・自己査定の支援、さらには債権管理や回収支援までを一貫してサポートします。

事務集中システム

事務集中システム

事務集中システムは、口座振替処理や他行振込(内国為替)処理などの営業店後方事務処理を事務集中センターに集約するシステムです。このシステムにより、事務作業の効率化が図られ、業務のスピードと正確性が向上します。

営業店システム

営業店システム

営業店システムは、窓口端末システムやATM関連システムなどから構成されており、営業店における効率的かつ安全な事務処理や顧客対応をサポートするシステム群です。

ダイレクトチャネルシステム

ダイレクトチャネルシステム

ダイレクトチャネルシステムは、インターネットバンキング、コールセンターなど、営業店窓口以外で顧客と直接的な接点を持ち、事務処理やマーケティング業務をサポートするシステム群です。

製品・サービス一覧

 銀行システムの製品・サービス一覧は、以下のページを参照ください。