金融ITシステムとは
金融ITシステムは、主に金融取引の処理、顧客管理、リスク管理を目的としています。具体的には、銀行の勘定系システム、クレジットカードの決済システム、証券取引システムなどが代表的な例です。また、金融庁や経済産業省などの規制当局が定めた監督指針やガイドラインに従う必要もあります。
近年では、FinTechやブロックチェーン、生成AIといった先進技術の導入による金融サービスのデジタル化が進み、OpenAPIを活用した金融ITエコシステムも急速に発展しています。
また、金融機関のシステムには、高度なセキュリティ、完全性、そして可用性が求められており、そのシステムの開発・運用には、金融業務とテクノロジーの深い理解が欠かせません。
しかしながら、金融ITシステムは発展と拡大を続けており、金融機関やITベンダの専門家にとっても全体像が掴みづらくなってきています。
こうしたことから、当サイトでは、金融ITのプロフェッショナルやこれからプロフェッショナルを目指す方々に向けて、銀行や証券、保険会社など、金融機関の業務を支える金融ITシステムの概要をわかりやすく解説します。
各システムの解説
信用リスク管理システム
信用リスク管理システムは、与信先企業の財務状況の悪化などによって資産価値が損失を被るリスク(信用リスク)を計量化するためのシステムです。このシステムにより、金融機関は信用リスクを定量的に把握し、リスク管理を強化できます。
市場リスク管理・ALMシステム
市場リスク管理・ALMシステムは、預貸系取引や市場系取引における金利、為替、価格変動による市場リスクを統合的に計測するシステムです。銀行勘定や有価証券の価値変動リスクを統合的に管理し、資産負債管理(ALM:Asset Liability Management)などに役立てられます。
流動性リスク管理システム
流動性リスク管理システムは、金融機関の流動性リスクを管理するシステムです。流動性リスクとは、急激な外部環境の変動によって必要な資金を確保できなくなる、または不利な条件で資金調達を強いられるリスクを指します。バーゼルIIIにおいてこの流動性リスクの管理が求められるようになりました。
オペレーショナルリスク管理システム
オペレーショナルリスク管理システムは、金融機関のオペレーショナルリスクを計量化・管理するためのシステムです。オペレーショナルリスクとは、誤った事務処理、内部不正、システム障害などによって発生する損失のリスクを指します。バーゼル2から新たな規制対象となりました。
口座振替管理システム
口座振替管理システムは、事務集中センターにおける口座振替依頼書のスキャン、紙媒体管理、ホストシステムへの登録など、口座振替業務全般をサポートするシステムです。このシステムにより、口座振替に関する事務処理の効率化が図られます。
為替集中管理システム
為替集中管理システムは、従来営業店ごとに行われていた振込依頼書や総合振込依頼書に基づく為替発信業務および組戻し業務を、事務集中センターなどで集約して処理するためのシステムです。これにより、事務処理の集中化と効率化が実現されます。
手形・小切手管理システム
手形・小切手管理システムは、事務集中センターにおける手形や小切手の集中的な事務処理を支援するシステムです。具体的には、手形や小切手の持出、持帰、期日管理などの業務を効率化します。ただし、2026年度末をもって紙の手形・小切手が廃止されることから、当システムも役目を終えることになります。
ダイレクトチャネルシステム
ダイレクトチャネルシステムは、インターネットバンキング、コールセンターなど、営業店窓口以外で顧客と直接的な接点を持ち、事務処理やマーケティング業務をサポートするシステム群です。
個人インターネットバンキングシステム
個人インターネットバンキングシステムは、個人顧客がインターネットを通じて残高照会、振込、カードローン取引、投資信託取引などを行うためのシステムです。24時間いつでも取引ができる利便性があり、顧客体験の向上に貢献します。
法人インターネットバンキングシステム
法人インターネットバンキングシステムは、法人顧客がインターネットを通じて法人口座の管理、総合振込、給与振込、外国為替取引などの法人向けサービスを実行するためのシステムです。これにより、法人取引の効率性を向上させ、企業の資金管理をサポートします。
クレジットカード会社システム
クレジットカード会社システムは、入会審査や途上与信、売上請求管理などを行う業務系システムと、オーソリゼーション機能を担う対外接続系システム、データベースマーケティングを支援する情報系システムなどで構成されています。
金融商品販売支援システム
金融商品販売支援システムは、金融機関の窓口において、投資信託、保険、公共債などの金融商品販売を支援するシステムです。銀行窓口販売の解禁とともにシステムが整備されてきました。
投資信託窓口販売システム
投資信託窓口販売システムは、投資信託の注文受付、約定処理、口座管理を支援するシステムです。また、金融商品取引法に基づいたコンプライアンスチェックの機能も提供し、適正な取引を確保します。
顧客管理/マーケティングシステム
顧客管理/マーケティングシステムは、顧客や企業の属性情報や取引データを一元的に管理し、統合的な営業活動やマーケティング活動を支援するシステム群です。顧客に対する効果的なアプローチと、効率的な営業戦略の実施が可能になります。
コンタクトセンターシステム
コンタクトセンターシステムは、コンタクトセンターにおける顧客からの問い合わせ対応(インバウンド業務)や、顧客へのセールス・マーケティング活動(アウトバウンド業務)を効率化するシステムです。このシステムにより、顧客対応の迅速化と営業効率の向上が実現されます。
本人確認・eKYCシステム
eKYCシステムとは、オンライン上で本人確認を行う技術やサービスです。本人確認書類と本人の顔写真などの画像をオンラインで送信する方法や、マイナンバーカードのJPKI電子署名を検証する方法により、身元確認を完結させます。
サイバーセキュリティシステム
サイバーセキュリティシステムは、標的型メール攻撃やDDoS攻撃など、サイバー攻撃から金融機関のシステムを多層防御するためのシステムです。これにより、金融機関の重要な情報資産を保護します。