サイバーセキュリティシステム
サイバーセキュリティシステムの概要
金融機関は、顧客の資産や機密情報を扱うため、サイバー攻撃の主要な標的となりやすく、特に国家レベルの攻撃能力を持つ組織からの脅威が深刻化しています。
近年、金融機関に対するサイバー攻撃の脅威は年々増加しています。その中には、暗号資産交換事業者からの暗号資産不正流出や、資金移動業者と銀行接続における認証の脆弱性を悪用した不正出金、さらには多くの金融機関を標的としたDDoS攻撃など、様々な被害が毎年のように報告されています。
こうした情勢を受けて、日本では2014年11月にサイバーセキュリティ基本法が施行され、金融機関を含む重要インフラ業者に対するサイバーセキュリティの推進が明記されました。また、金融庁は2015年4月に監督指針と検査マニュアルを改正し、金融機関に求めるサイバーセキュリティ管理態勢について、監督・検査の着眼点を明確化しています。
さらに金融庁は、2015年に「金融分野におけるサイバーセキュリティ強化に向けた取組方針」を策定し、以降定期的に更新を行っています。2022年2月に公表された第3版では、「モニタリング・演習の高度化」や「サイバーセキュリティに関する自己評価の促進」など、5つの重点項目が示されました。
2024年10月には、「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」が公表され、金融機関に求められる具体的な対応事項が明確化されました。このガイドラインでは、基本的な対応事項に加え、規模や特性に応じて望まれる対応を含む約170項目が提示され、金融機関に対しリスクベースアプローチによる実質的な対策を促しています。
金融分野におけるサイバーセキュリティガイドライン
「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」は、金融庁が2024年10月4日に公表したもので、金融機関等に求められるサイバーセキュリティ対策を詳細に示しています。
このガイドラインは、金融機関の業務の健全性と適切性を確保するため、サイバーセキュリティの強化が不可欠であるとの認識に基づいて策定されました。ガイドラインは約170項目からなり、「基本的な対応事項」と「対応が望ましい事項」に分類されています。
「基本的な対応事項」は、サイバーセキュリティリスクの特定など、金融機関等が一般的に実施すべき基礎的な事項を指し、全ての金融機関等に実施が求められます。一方、「対応が望ましい事項」は、金融機関等の規模や特性を考慮し、特に大手金融機関や主要な清算・振替機関等が参照すべき優良事例や先進的な取組みを示しています。
これらの事項については、各金融機関等が自らのリスク評価に基づき、対応の要否を判断することが求められています。ガイドラインの構成は、第1節「基本的考え方」、第2節「サイバーセキュリティ管理態勢」、第3節「金融庁と関係機関の連携強化」となっており、特に第2節では、サイバーセキュリティの観点から見たガバナンス、リスクの特定、防御、検知、対応、復旧、サードパーティリスク管理に関する具体的な着眼点が示されています。
また、ガイドラインは、金融機関等が形式的な遵守にとどまらず、実質的かつ効果的なサイバーセキュリティ管理態勢を構築することを重視しています。そのため、金融庁は関連するガイドラインとして、米国の非営利団体であるCyber Risk Instituteが公表する「CRI Profile」などの活用を推奨しています。
金融機関等は、これらのガイドラインを参照し、自組織のリスク評価を行った上で、リスクベースアプローチにより、実質的かつ効果的な対策を講じることが求められています。さらに、ガイドラインでは、経営陣の積極的な関与と理解の重要性が強調されています。経営陣は、サイバーセキュリティ戦略や取組計画の策定・実施において主導的な役割を果たし、適切な経営資源の確保や人材育成、内部監査の実施など、組織全体での包括的な管理態勢の構築を推進する責任があります。
また、サードパーティリスク管理の強化も重要なポイントとして挙げられており、サプライチェーン全体を考慮したサイバーセキュリティ戦略の策定や、外部委託先のリスク評価・管理が求められています。総じて、このガイドラインは、金融機関等が直面するサイバーセキュリティリスクに対し、組織全体で継続的かつ実質的な対策を講じるための詳細な指針を提供するものとなっています。
なお、FinBridgeでは金融機関会員に向けて、このサイバーセキュリティガイドラインのExcel版を無償公開しています。各金融機関において自主的な取組を進める上でぜひ有効にご活用ください。
サイバーセキュリティシステムの概要図
以下に、一般的な金融機関における、境界防御型サイバーセキュリティシステムの概要図と対策ポイントの例を示します。各金融機関により、システム構成や対策ポイントは大きく異なります。(構成図は金融機関会員限定としています。)
また、パブリッククラウドおよびゼロトラストアーキテクチャを採用した金融機関におけるサイバーセキュリティシステムの概要図と対策ポイントの例を示します。(構成図は金融機関会員限定としています。)
サイバーセキュリティシステムの概要
ここでは、各サイバーセキュリティシステムのカテゴリと主な製品種類について、代表的なものを示します。
ネットワークセキュリティ
主な製品種類
- ファイアウォール
- ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)
- VPN(仮想プライベートネットワーク)
- IDS/IPS(侵入検知・防御システム)
- ZTNA(Zero Trust Network Access)
- セキュアウェブゲートウェイ(SWG)
- ネットワークアクセス制御(NAC)
エンドポイントセキュリティ
主な製品種類
- エンドポイント検出・対応(EDR)
- 次世代アンチウイルス(NGAV)
- モバイルデバイス管理(MDM)
- 統合エンドポイント管理(UEM)
クラウドセキュリティ
主な製品種類
- クラウドアクセスセキュリティブローカー(CASB)
- コンテナセキュリティ
- クラウドワークロードプロテクション(CWP)
- クラウドセキュリティポスチャーマネジメント(CSPM)
データセキュリティ
主な製品種類
- データ漏洩防止(DLP)
- 暗号化ソリューション
- データベース監査ツール
- 暗号鍵管理システム(KMS)
アイデンティティセキュリティ
主な製品種類
- 多要素認証(MFA)
- 特権アクセス管理(PAM)
- ユーザ行動分析(UEBA)
- IAP(Identity-Aware Proxy)
- IDaaS(Identity as a Service)
アプリケーションセキュリティ
主な製品種類
- セキュリティコードレビューソリューション
- SAST(静的アプリケーションセキュリティテスト)
- DAST(動的アプリケーションセキュリティテスト)
- SCA(ソフトウェアコンポジション解析)
脅威インテリジェンス
主な製品種類
- 脅威インテリジェンスプラットフォーム
- ダークウェブ監視ツール
- 攻撃シミュレーション(BAS: Breach and Attack Simulation)
- 脅威ハンティングツール
セキュリティ運用・管理(SOC)
主な製品種類
- セキュリティ情報・イベント管理(SIEM)
- セキュリティオーケストレーション自動化対応(SOAR)
- セキュリティ監視サービス(MSSP)
- インシデント対応プラットフォーム
セキュリティコンサルティング・診断・訓練
主な製品種類
- セキュリティコンサルティング
- 脆弱性検査・ペネトレーションテスト
- セキュリティ評価・監査
- インシデント対応訓練
製品・サービス一覧
サイバーセキュリティシステムの製品・サービス一覧は、以下のページを参照ください。